寒くなってくると猫(雄)でよく見受けられるのが膀胱炎とそれに伴う尿道結石です。


○トイレへ何度も行くが尿がごくわずかしか出ていない。あるいはしゃがんだだけで全く尿が出ていない。

○トイレへ行ってずっと排尿の体勢をとったままでいる。

○排尿するときに鳴き声をあげる。

○尿がピンクや赤い色をしている(血尿)。

○排尿後のみならず頻繁に陰部を舐めているのをみる。

○丸一日尿を出していない


  などの症状がみられたら要注意です。

 猫の尿は犬に比べても濃縮率が高く、細菌などが繁殖しやすくなっております。寒くなりもともと水を飲む

ことの少ない猫は更に水を飲む機会が減りがちで更に尿の濃縮率が上がってしまう可能性があります。

 そうすると細菌感染した場合菌の繁殖が起こりやすく膀胱の粘膜が刺激され膀胱の壁が腫れて厚くなります。

 膀胱は本来水風船のように伸び縮みのできる薄い壁の臓器です。なのである程度尿が溜まると伸びて膨らみ、

それが尿意となってトイレに行きます。

 これが膀胱炎で壁が厚くなり伸び縮みができなくなった状態だと、さほど尿が膀胱に溜まっていなくても

張った状態になりすぐ尿意を覚えトイレへ行きます。しかし実際尿は溜まっていないので少ししか出ません。

しかしトイレから戻ってきてしばらくするとまた膀胱が張った感じになりまたトイレへ行く・・・と

この繰り返しが頻尿と言われるものです(人間でも同じですね)。 

 そして炎症でただれた膀胱の粘膜の毛細血管が破れた場合は出血し、尿と一緒になって血尿になります。

 また細菌の増殖により尿のPH(酸性やアルカリ性)が大幅にぶれ、尿の中のミネラル成分が結晶と

なって出てくる場合があります。


 結晶といっても粉のようなものではあるのですが雄猫の尿道は雌に比べ長く出口にむかうにつれ細く

なっていく構造になっています。

 この構造のため粉のような結晶が最初は尿道をスルスル通り抜けていったとしても徐々に狭い部位へ

堆積していくと片栗粉のように固まって完全に尿道を塞いでしまう現象が起こります。

 こうなると途端に具合が悪くなってきます。

 尿は体の老廃物を外へ排出するための重要な手段です。それが妨げられるとなると老廃物(有毒物)が

体内に蓄積されていってしまうことになります。

 いわゆる尿毒症という状態に陥ります。

 尿毒症になりグッタリして病院に運ばれてくる猫さんもいます。そういう子の腹部を触診してみると

膀胱は行き場を失った尿でパンパンに膨れ上がっていることが多いです。

 そうすると即入院となってしまい生命の危険もでてきてしまいます。

 ここまでくる前に異常に気づき早期に治療(内服薬、療法食への切り替えなど)することで解決

したいものです。

 石が詰まることも大変なのですが膀胱炎になった際に本人が気にして陰部(ペニス)を舐めてしまう

猫さんも多いです。

 

  猫の舌はご存知のようにおろし金のようにイガイガした

トゲ状のものが密集しています。その舌で柔らかい

ペニスの先端を舐めることにより組織が破壊され、尿道の

出口が閉じてしまう場合があります。

こうなると場合によっては手術が必要になってくるケースも

あります。手術後の管理も長期になる可能性もあり、なるべく避けたい事態です。


 このように便秘も大変ですが、尿というのは一日出ないだけでもすぐに体へ影響が出てきてしまいます。

 寒くないときでもかかる病気ではありますが特に寒くなってくると多いイメージはあります。

 しかも膀胱炎になりやすい体質というのもありそうで毎年寒くなってくる季節に膀胱炎の症状が出てくる猫さんもいるようです。このような子には日頃の予防するための管理として尿のphを結晶化しにくいところ

にキープする療法食をお勧めしております。

 ただしフードに薬が入っているわけではないのでこのフードを消化吸収した結果の効果なのでオヤツ等が

与えられてしまうと充分な効果が発揮できなくなってしまいます。


 まずはトイレ関係の異変に気づいたならば様子を見ずに来院していただくのが一番理想ではあります。

                                                

                                      2013年 10月

  

 

※上記は当院の方針であり、他院と異なる場合があります。ご了承下さい。

 

猫の下部尿路疾患

HOMEに戻る

コラム目次に戻る