高齢の猫さんでよくみられるのが腎臓の病気です。

 15才以上の猫さんでは実に10匹のうち1.5匹は腎臓病であったというような報告もあります。

 最近よく水を飲むようになってきてそれに伴い尿の量も多い、なんて症状に気づかれて来院される飼い主

さんが多いです。

 症状が進行して来院する子だと横になって意識朦朧、皮膚はカピカピでつまんで指を離してものまま

シワができている、なんて状態の子もいます。

 なかには見た目全く異常が見受けられない子でも健康診断もかねて血液検査をしてみたら腎臓の数値が

高かった、なんていうケースもあります。

 水を多く飲み尿が多いという他に個体差や症状の進行具合にもよりますが吐き気が止まらなかったり、

脱水がひどい子では便秘気味であったり、目がみえなくなったり更にはケイレン発作のようなものを起こすなどの症状が出てくる場合もあります。

 腎臓の主な働きはご存知の通り体から出る老廃物を濃しとって尿を作り体の外へ排泄するということ

です。

 これが特に猫さんでは加齢により腎臓での尿の濃縮機能というのが衰えてきてしまうため、十分な老廃物排泄ができなくなってきてしまいます。そのため尿は薄く水のような色で匂いも強くないものを一回に大量に出すというような傾向が出てきます。

 腎臓の障害というものは不可逆的なもので一度ダメージが与えられた組織は元に戻るという事はありま

せん。

 腎臓はどの動物でも2つ(一対)あるのですが、そこの正常な組織がダメージをうけた部分の働きもカバーして機能するようになります。

 カバー能力が発揮できているうちはいいのですが障害部位の範囲の方が大きくなっていくとカバーしきれなくなってきて症状が出てきます。

 腎臓病になってくる子は脱水してしまう傾向が多いです。内服薬などで解消できればいいのでしょうが

なかなかそれでは改善されないのが現状です。

 人のような血液透析、腎臓移植なども研究され実施されているところもありますがまだまだ一般的では

ないところが現状です。

 飲む水の量を増やすという事は有効ですがもともと水を飲むことが少ない猫にさあもっと水を飲みなさいといっても無理な話ですし、強制的にスポイトや注射器で飲ませるとしても十分量は飲ませられない

でしょう。

 そうなると病院の方で皮膚の下に水分を注入する皮下補液のような方法をとっていく必要性が出て

きます。

 ただ水分の代謝などは毎日繰り返される事ですので一回補液をいれたら数週間〜数ヶ月は維持できる、

とはなりません。

 ここがなかなか大変なところで内服であればまとめて何日分、何週間分とお出しして家で与えて下さいとできるのですが補液は体の水分を維持させ且つ排尿量を確保するためのものですのでこまめな注入というのがどうしても必要になるケースが多いです。

 勿論腎臓病により併発してくる高血圧症などには内服薬を飲んでいったり、貧血がみとめられた子には

注射が必要になってきます。また腎臓になるべく負担をかけないタンパク質、脂質、リンやナトリウムなどのミネラルを控えたフードに切り替えるという事も大事です。

 しかしあくまでも脱水を呈しているケースでは水分補給、尿量確保というのはメインの治療内容となってくるでしょう。

 

 症状のレベルは個体差が当然ありますから週に1 〜2回の子もいれば3日に1回、2日に1回ひどい子だと

毎日通院なんて子もいるのが事実です。

 年齢を経ていけば更に腎臓の衰えが進んで今までの間隔の補液ではカバーできず頻度を増やさざるを

得ないというケースも多々あります。

 症状が重い子では入院して数値が下がったら皮下補液に戻る、というようなサイクルを繰り返す子も

います。

 ただし飼い主さんあっての猫さんですから毎日など通院は困難なことが多いでしょう。その時は飼い主さんと相談して一回の補液量を増やしてみるなど対策をとりながらやっていければと思います。

  

 ご自宅の猫さんが7才あたりを過ぎたら一度健康診断なども受けてみると良いかもしれません。腎臓の数値の上がり始め(初期段階)の時点では猫さんは元気も食欲もあり毎日様子をみている飼い主さんでさえ

気づかないことが殆どです。

 またシニア用やそれこそ腎臓病対策用のフードに切り替えていくというのも「転ばぬ先の杖」ではあり

ませんが有効だと思います。よく療法食は普通の子が一般食として食べるのは良くないのでは?というような質問を受ける事がありますがそのような事はないです。


 寄る年波には勝てませんが猫さんが少しでも長く快適な暮らしを過ごせるよう、できる事からやって

あげると良いと思いますね。

              

                                         2013年 10月


 ※上記は当院の方針であり、他院と異なる場合があります。ご了承下さい。

猫の慢性腎臓病

HOMEに戻る

コラム目次に戻る