人の社会もそうですが動物の医療技術やフードの進歩、飼育環境の改善等により寿命が延びてきています。
これは非常に喜ばしいことであります。
しかし高齢になればこそ出てくる病気というか弊害はあります。食欲もあるし血液検査をして特に数値に
異常は認められなくたって筋肉は細くなり体重は減り、起立することも困難になってくることも多々あります。
うまく水分の保持が出来ず脱水気味になってしまう子もいます。
腰の神経系が弱ってきてうまく排尿出来なくなることもあります。
寝たきりになると頬や肩、腰あたりの骨が地面に接地するためそこに体重がかかり皮膚が破けてきたりする
いわゆる床ずれ(褥創)が出てきたりもします。
また夜中に訳もなく鳴いてしまういわば痴呆のような症状も少なくありません。
いずれこのような状態では飼い主さんの介助なしでは生活できません(生きていけません)。
ただしかなりの負担が飼い主さんにかかる場合があり、介護疲れのストレスで参ってしまう可能性が大きい
のも事実です。
いままで共に生活してきた家族ですから介護はしなくてはならないのですが飼い主さんの生活に影響がでて
きてしまうと悪循環に陥ってしまいます。
そうならないためになるべく飼い主さんの生活を考慮して尚かつ効率の良い介護というのを提案していけたらいいなとは思っております。
寝たきりになってしまうと人もそうですが足の筋肉を使わなくなり固くなりがちで血行も滞ってくる事が多いです。少しでもそういう状態を避けるために日々のマッサージなどは効果的です。
ご飯は普段立った状態やお座りの姿勢で食べている子が殆どですから寝たきりになってしまうとうまく食べる事が出来なくなる事も多いです。
そうなると飼い主さんの手からご飯を口の中に入れてあげると食べやすいと思います。顎がうまく開けられ
ない子では流動食などを大きな注射器などに入れて口の中に入れてあげてもいいかもしれません。
食べにくいだけでいざ口の中に入れるとよく飲むという子も多いです。
脱水気味であれば水を多く飲ませればいいのでしょうがなかなか十分な量を口から入れてあげるという事は
困難かもしれません。
そんな時は病院で皮下補液という形で背中の皮膚の下に水分を注入するという方法もとれます。
排便は意外と立てなくとも勝手に押し出されて出てくる事が多いですが排尿となると漏れる分にはまだいいのですがうまく排尿できずに膀胱に溜まりすぎてしまう場合があります。
尿が溜まりすぎれば膀胱炎などにつながり体調を崩してしまう可能性が出てきます。そうなるとお腹を圧迫
してあげて排尿を促したり、あるいは雄の場合などはチューブ管を尿道に入れて尿を抜くなどの必要性が出て
きます。
勝手に排尿する子でも寝たきりであればお尻周りが濡れてしまうのでオムツなどをつけないといけないかも
しれません。
床ずれをなるべく引き起こさないためには低反発のマットなどを敷いてあげるといいでしょう。
皮膚が破けてしまっているのであれば分泌物で蒸れてしまわないように傷の周囲の毛は刈って消毒後、ガーゼなどでカバーするのもいいかもしれません。
ただこれは横になって寝たきりになってしまうからできてしまうものなのでなかなか完治とならないことも
多いです。
徘徊というのも良く見受けられる行動ですね。ずっと部屋の中を壁づたいに歩いてどこか窪みのあるところで頭を入れてジッとしている、なんて話も良く聞きます。
可能であればサークル状に柵を設置してその中を円状に歩けるようにすれば体や頭をぶつけたりすることが
少なくなるかもしれません。
また夜泣きなどは飼い主さんが結構参ってしまう事の一つだと思います。近所の目もありますし心労となってしまいますね。
これにはサプリメントや安定剤などの内服が必要になってきます。
但しサプリメントなどは即効性がある訳ではないので1〜2ヶ月位は継続して効果を判定する必要はあり
ます。安定剤は耐性(徐々に効果が出なくなってしまう)が出てくるようなものも多いので使い始める
タイミングも重要になってきます。
これらをふまえながら対処していくことになっていきますね。
どなたも自分のペットが寝たきりになるということを想定して飼い始めるということはないでしょう。
しかしこれからの時代こういうことはどの子にも起こりうることではあるのです。
あまり悲観するのは良くないですが頭の片隅にでも覚えておいてもらえるとありがたいです。
2013年 10月
※上記は当院の方針であり、他院と異なる場合があります。ご了承下さい。